船は一艘ずつ、メコンに浮かべられ、放たれていく。
すぐに転覆してしまう船があるのも、ご愛敬。
そのたびに、歓声と悲鳴と笑いが湧き上がる。

そんな熱気も届かない彼方では、ろうそくの火がたゆたいながら、列をなして流れていく。
川面がまったく見えないほど闇が濃い。まるであちら側は黄泉の国のようだ。

現世と来世を、漆黒の流れが隔てている。
その見えない流れに、大小いくつもの灯籠がゆらめき、たゆたい、彼方に運ばれていく。