すぐそばに並んでいる食堂の一軒に入ると、メコンに最も近いテーブルに腰を下ろした。
なにはともあれ、まずは、ビアラオだ。

きらめくメコンと、落ちようとしている夕陽。
ボーッと眺めていると、目の前に、これまたタイミングよく、ビアラオが置かれた。今度はビンだ。

グイッ、グイッ

喉から胃、さらに全身へと、しびれるような解放感が、じわじわと染みこむように広がっていく。

しっとりと後を引くビアラオの泡と、雨期明け前のやや湿った空気、そして夕陽とメコンのきらめきが、外から内から、この身を心地よく包み込み、この心をどこまでもやさしく浮遊させる。

もう、どうなってもいい。

この放心と浮遊の感覚を、いったいどうやって表現すればいいのだろうか。

声にならない声だけが、頭の中を漂っていた。