午前8時40分。バンコクのドン・ムアン空港から、デンパサール行きの飛行機に乗り込んだ。早起きしたせいもあって、機内食を取り終えると、いつしか心地よいまどろみに入っていった。
どのくらいウトウトしただろうか、目が覚めると、何となしに窓に目をやった。鮮やかなエメラルド色の海が眼下に広がっている。遠くに視線を移すと、茶色と緑色に彩られた陸地が見える。ジャワ島だろうか、あるいは、あれがバリ島だろうか……。
バリ島といえば、新婚旅行のメッカ。
そんなお決まりのイメージしか浮かんでこないような僕が、なぜバリ島行きを決めたのか。
きっかけとなったのは、書店でたまたま手に取ったガイドブックだった。
そろそろ旅に出ようと考えていたものの、肝心の目的地がなかなか決まらなかった。そんなある日、仕事を終えた帰り道、どこかいい候補地はないものかと書店の旅行コーナーをウロウロし、何となくそのガイドブックを手に取ったのだった。
ペラペラめくってみると、「神々と芸能の島、バリ」いう一節が目に飛び込んできた。その文句に、意外な驚きと強い興味を覚えた。さらにページをめくってみた。華麗で神秘的な舞踊や、色鮮やかな祭礼をとらえた写真に目を奪われていった。
「バリって、単なるリゾートアイランドだと思っていたけど、実はかなり歴史と文化の深い島なのかもしれない・・・」
バリのことをもっと知りたい。この本をきっかけにそう思うようになった僕は、さまざまなメディアを通じてバリに関する情報を集め始めた。次第に気持ちは、「バリの芸能や生活をこの目で見てみたい」というレベルへと高まっていった。
さいわいなことに、芸能の中心地であるウブドという村には、ロスメンと呼ばれる安宿がたくさんあるという。また、バリ島からなら、隣のジャワ島にあるボロブドゥール遺跡にも簡単に立ち寄れる。ボロブドゥールといえば、アンコールワット、バガンとともに、世界三大仏教遺跡のひとつだ。いつかは訪ねてみたい遺跡の筆頭でもあった。そんな僕にとって、バリ島はまさに絶好の旅行先といえるのではないだろうか?
かくして、バリ島行きが決まった。そして今、あこがれのバリ島が眼下に広がっている。 |