今日は、クラトンとプランバナン寺院群を巡るつもりでいた。そのために、昨日ホテルで車を手配しておいた。チャーター料は、4時間で70,000ルピアだった。朝10時にホテルを出発。
最初の目的地であるクラトンに向かう途中、今日はニュピであることを思い出した。ニュピとは、バリのサカ歴の元旦である。この日バリでは、商店やレストラン、はたまた空港までもが休みになる。バリヒンズー教徒のみならず、観光客でさえ外出は許されないはずだ……・。運転手にそのことを確認してみる。「そう、今日はニュピだから祝日なんだ。でもバリとは違って、ここではニュピでも通常通り営業するんだ」とドライバー。なるほど、バリとジャワでは宗教も違うし、習慣も違ってくるのか。
クラトンに到着した。王宮というからにはさぞかし豪華なのだろうと期待していたのだが、実際はそれほどでもなく、うーん、こんなものかという印象。そのせいか、30分あまりで見学を終えてしまった。ペースは早いが、次の目的地。プランバナンに行くことにした。
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ジョグジャカルタを離れ、数十分走ると、プランバナンに到着した。入場口を見つけ、さっそくチケットを買おうとしたところ、窓口の人に「あちらの窓口に行きなさい」と言われる。彼が指差した方向を見ると、そこには外国人専用のチケット売り場が。そこでチケットを求めると、32,500ルピアだという。いわゆる外国人料金ってやつか。しぶしぶ払うと、やけに高級な「入場証明書」と英語版ミニガイドブックをもらった。別にうれしくないけれど。
ボロブドゥールと同じように、プランバナンも周囲が公園になっている。遺跡を公園にしてしまうっていう感覚には違和感を覚えるのだが、考えてみれば、日本でも城跡を公園にしたりしているのだ。それと同じことか。
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プランバナン寺院 |
祝日のせいか、公園内はたくさんの人で賑わっていた。その広大な敷地の一画にそびえ立つプランバナン(別称ロロジョングラン)寺院は、9世紀中頃、ボロブドゥールを建立したシャイレンドラ王朝に服属していたマタラム王国によって建造された。ボロブドゥールは水平型の仏教寺院、プランバナンは垂直型のヒンズー寺院と、外形も宗教も異なってはいるけれど、どちらも黒っぽい安山岩を材料としているからか、全体的に同じような印象
― 重厚感と威圧感― を覚える。
神殿に登ってみる。ボロブドゥールとは異なり、回廊はかなり狭かった。有名なドゥルガ像が置かれている堂内に入ったが、真っ暗で何も見えなかった。ライトで照らしてくれる係員もいないようだ。ペンライトを持ってくれば良かったと後悔した。 |
次に、同じ公園内にあるセウ寺院に向かった。入口には、2体の像が向かい合って立っていた。クベラという守護神だそうだ。仏教寺院の仁王像みたいなものだろうか。そのお腹ぽっこりの姿は、恐いというよりはユーモラス。こんなに愛嬌たっぷりでいいのだろうか。
境内にはかつては数百のストゥーパが並び立っていたそうだが、今はすべて瓦礫の山と化していた。ジグソーパズルのようにつなぎ合わせてすべて復元しようとしたら、いったい何十年かかるかわからない。誰もやりたがらないだろうな。
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セウ寺院 入口で対峙する守護神には愛嬌がある |
公園内の寺院はこれですべて見終えた。次はどこに行こうか。近くには、プラオサン寺院やボコの丘など、見たい場所がいくつかあった。だが僕は、ホテルに戻ることを選んだ。強烈な陽射しを浴びながら公園内を歩き回ったため体力の消耗が激しかったし、ボロブドゥールとロロジョングランという二大遺跡を堪能した今、すでに心は飽和状態だった。これ以上寺院を巡っても新たな感動を覚えそうにない。
ホテルに戻ると、しばらく休憩し、その後近くのバティック工房を回ってバティックを数点買った。夜は、ラーマーヤナバレエを鑑賞することにした。寺院で繰り広げられるウブドの舞踊とは異なり、ベチャでたどり着いたこの会場はまるでシアターのような豪華なつくり。ガムランの編成もウブドのとは少し違い、途中で女性の歌(語り?)が入るというものだった。舞踊も、まだ宗教儀式的な色合いを強く残しているバリのものとは異なり、完全なショーといった感じ。だが、それはそれでとても楽しめた。
翌朝は、朝7時にチェックアウト。8時半の飛行機でバリに戻った。新しいホテルを探すのも面倒だったので、また「ガゼボコテージ」に泊まることにした。予約はしていなかったが、部屋は余裕で確保できた。
ニュピ明けのバリのビーチはすごく静かで、ジョグジャの喧騒とは対照的だった。何日か前と同じように、僕は砂浜のデッキチェアに横たわった。目を閉じて心地よい波の音に耳を傾けていると、朝霧に包まれたボロブドゥールが、なんだか遠い昔の幻のように感じられてきた。 |