10時半。「マノハラ」をチェックアウトする。フロントに「タクシーでジョグジャカルタへ行くつもりだ」と告げると、「タクシーはここではつかまらない」という返事。バスならもっと安く行けると勧められたが、それでは時間がかかりそうだ。なるべく効率的に観光したい。結局、ミニバンを7万ルピアでチャーターすることにした。痛い出費だが、時間を優先する以上仕方がない。
ミニバンを待っている間、ホテルの従業員と話をする。まだ今夜の宿は決まっていないんだ、と言うと、「ジョグジャでホテルを探すなら、プラウィロタマン通りに行くといい」と教えてくれた。その通りなら、確か『地球の歩き方』にも載っていたような気がする。ほかに当てもないし、ここは彼の勧めに従うことにしようか。さらにいろいろ世間話をしているうちに、頼んでおいたミニバンが到着する。1泊しかできなかったが、従業員の対応も良く、いい感じのホテルだった。
1時間ほど走っただろうか、ミニバンはジョグジャの市街に入った。急に交通量が増えてきて、車がなかなか進まなくなった。ジョグジャ市街は、車とバイク、それに馬車とベチャが無秩序に道路を行き来しているような感じ。けっこう大きい町なんだとびっくりした。ここに来る前にウブドに1週間いたので、なおさらそう感じるのかもしれない。
プラウィロタマン通りに到着。まずは、『歩き方』で目をつけておいた「Duta Guest House」に行ってみた。一番いいシングルルームを見せてもらう。エアコン、半野外のバスタブ、TVが付いていて調度もいい感じだ。料金をたずねると「朝食・税込み170,000ルピアを105,000ルピアに負ける」と言うので、ここに泊まることに決めた。マノハラといい、このホテルといい、こちらから請求する前にディスカウントしてくれるのでうれしい。これもシーズンオフだからなのか。いい時期に来たのかも、とちょっとうれしくなった。
チェックインして一息ついたので、さっそく観光に出かけることにした。まずはクラトン(王宮)に行ってみようかと思い、フロントで行き方をたずねると、「クラトンへの入場は1時までなので今からでは間に合わない」と言われてしまう。がっかりしたが、まあ明日行けばいいだろう。代わりに、メインストリートのマリオボロ通りを散歩しようと考えた。そうフロントに告げると、「スリには注意するように」との忠告を受けた。
ホテル近くのレストランでミーゴレンを食べた後、声をかけてきた年輩のベチャの運ちゃんと、マリオボロ通りまでの料金を交渉する。おじさんは、マリオボロ通りまでは遠いからと言い張って、5000ルピアより料金を下げようとしない。それはちょっと高いんじゃないのと思ったが、外は暑いし、別の運ちゃんと交渉するのも面倒だ。5000で手を打つことにした。
ベチャはマリオボロ通り目指してゆっくりゆっくり進んでいった。インドのリキシャと違い、座席が自転車の前方にあるので、近くを車がすれ違うときなど、正面衝突するんじゃないか、と一瞬冷やりとさせられたりもする。でも、ゆっくり流れていく街並みを、何物にも遮られることなく眺めることができる。それが最高に心地よい。それにしても、この猛暑の中、高齢の身で人を乗せて走るのはきつそうだ。乗る前は高いと思ったけど、やっぱり5000ルピアでは安かったかな、と少し罪悪感を覚えた。
マリオボロ通りに到着。ジョグジャカルタの駅に向かってぶらぶら歩き出した。月曜だというのに、通りは人でいっぱいだ。左右の歩道沿いには、おみやげ屋がびっしりと並んでいる。確かに、ホテルの人がスリに注意と言ったのもうなずけるな、と一人納得し、バッグに気を配りながら人ごみを縫って歩道を進む。露店を冷やかしながら散歩を続ける。特にこれといって買いたいものは見つからなかったが、地元の人々のにぎわいを肌で感じるだけで面白かった。
店を冷やかしながら楽しく歩き回ったが、しばらくするとさすがに疲れを覚えたので、いったんホテルに戻ることにした。来たときと同じ場所で、別のベチャをつかまえた。今度は若い運ちゃんだ。交渉すると3000ルピアになった。さすがに若いだけあってこぎ方が違う。さっきよりかなり早くホテルに着いた。
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