クライマックスを過ぎたのを見計らってメコンを離れると、一軒の食堂に入った。表通りは、昨日までと変わらぬ静けさの中に横たわっている。ついさっきまで渦巻いていた光と音と熱気の残滓が、かすかに、ほのかに漂っているだけだ。その切ない余韻を、ビアラオの泡が吸収し、心と身体に染みわたらせていく。
お祭りの間ぱらついていた雨が、いつしか本格的なザーザー降りに変わっていた。
灯籠流し。ひょっとしたら雨期明けを祝うお祭りではないだろうか。そんな推測をあざ笑うかのように、雨脚はますます激しくなっていく。傘なんて持ってない。この土砂降りの中、どうやって宿に戻ろうか……。
このお祭りがオークパンサーと呼ばれる雨安居明けを祝うものだと知ったのは、帰国後のことだった。そのとき、ようやく納得がいった。首都ビエンチャンがどうしてあれほど賑わっていたのかを。ぼくがラオスを訪れたのは、オークパンサーを目前に控え、全土が期待にあふれている時期だったのだ。それを知って訪れていれば違った発見や体験もできたかもしれない。けれども、何も知らずに訪れてよかったと今は思う。偶然に遭遇したからこそ、印象がより深く、強く心に刻まれることになったのだから。この強い雨音とともに。 |
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