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早朝の托鉢を見終え、朝食を取り終えると、あたふたとパッキングをすませた。
午前9時前。お世話になったコールドリバーゲストハウスを発つ日が来た。
今日は乗り合いのミニバスでバンビエンまで南下する。さらに明日は、バスでビエンチャンまで南下するつもりでいた。あさっての午後には、ハノイへの機上の人となる。
バッグを持って部屋を出てきたぼくを見たとたん、いつも穏やかでニコニコを絶やさない宿のおじさんが、たいそう悲しげな表情に変わると、「また1人行ってしまうのか」と嘆いた。さもありなん。ぼくが来た当初は日本人を含む多くの旅行者でにぎわっていたのだが、オークパンサーが過ぎてからめっきりさみしくなり、今日も、ぼくを含めまた何人かが去ろうとしている。その落胆のそぶりがまるで絵に描いたようにおおげさだったので一瞬クスリと笑みが込みあげてきてしまったのだが、やはり気の毒ではあった。
「ルアンパバーンに来る旅人と会ったら、どうかうちの宿のことを宣伝して欲しい」
「もちろん。日本でも紹介しておくよ」
そんな言葉を交わしているうちに、バス乗り場への送迎バイクがやってきた。さようならを言い、出発。去りゆく土地への名残惜しさと、新たな地への期待感が交錯する。ときに悲しく切ないけれど、旅という行為を最もリアルに感じる瞬間でもある。
尾根づたいに見晴らしのいい道を走っていたと思ったら、突然、とうねうねした道を谷に向かって下っていく。かと思えば、再び尾根へと峠道を上っていく。そうやっていくつもの山を越え、集落を通り過ぎていった。何度かの休息を挟んで走り続けることおよそ6時間。ぼくを含む10名の旅行者を乗せたトヨタのバンがバンビエンに到着したときには、時計はすでに午後3時を回っていた。バンビエンでは1泊しかしないつもりなので、宿を探す時間も惜しかった。最後に停車したゲストハウスにそのまま泊まることに決め、荷物を置くと、表に飛び出した。
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