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期待は、しかしまもなく落胆に変わった。
太陽が顔を覗かせたのは、ほんの一瞬のことだった。
大西洋を見渡せる一画にたどり着いたとたん、夕日は分厚い黒い雲に隠れ、
いままで照り返しのまぶしかった白壁も、沈鬱の表情に変わってしまっていた。
メディナも、海も、空も、立ちつくすぼくも、いつしか静かな暗闇に包まれていった。
雨上がりの白壁。その一瞬のまぶしさは強く印象に残ったものの、壮大な落日を眺めることができなかったことが、ドラマのクライマックスで幕が下りてしまったような、釈然としない気持ちにさせていた。
もう1日ここに滞在してみようか……。
近くの食堂で夕食をすませると、雨はますます激しさを増していた。土砂降りと言ってもよかった。ますます冴えない気分でホテルへと向かった。途中、一軒のネットカフェを見つけた。避難がてら入ってみることにした。エッサウィラとラバトでメールをチェックしなかったことが、少し気にもかかっていたからだ。そんな予感が的中したのか、受信箱に、1通の意外なメッセージが届いていた。うかない気分でいたぼくの心に、新たな希望が芽生えたような気がした。
やはり、明日ここを発つことにしよう。どうやら、思ってもみなかった展開が生まれそうだ。
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Asilah: 15/15 |
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