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メディナの北側には、メラーというかつてのユダヤ人街がひっそりと残っている。
モロッコ、しかもこんな果ての街にユダヤ人が、とこのときは意外に思えたのだが、あとで調べたところ、エッサウィラ以外にも、モロッコの多くの都市にはメラーがあるという。ローマ帝国に追われた者や、時代を下ればレコンキスタの影響でイベリア半島から流れてきた者たちが形成したエリアである。モロッコがヨーロッパ-サハラ間の交易ルートの中継地として栄えていたという経済的要因が彼らをしてそうさせたのかもしれない。が、追われる者の最後の行き場は果ての国しかなかった、とも考えられる。そう想像すると、またまたこの地に哀愁を感じとってしまう。

しかし今では、そのメラーにユダヤ人はほとんど住んでいない。イスラエルの建国によって、多くのユダヤ人が彼の地へと帰っていき、残された街はアラブ化が進んだからだ。ここがメラーだとは気づかずに通り過ぎてしまったことが他の街でもあったかもしれないが、それも無理はない。エッサウィラでも、ここがユダヤ人街であることを示すものは、不勉強ということもあって見つけることができなかった。しかし、寂れ具合は突出していた。それが最も明らかな証左なのかもしれない。

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