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姿を表した太陽は、オレンジ色の輝きを放ち、大西洋に沈んでいく。
カモメが音もなく目の前をよぎっていく。
古い要塞がシルエットとなって、何百年前と同じように静かにたたずんでいる。

こんな素敵な街なら、このまま何ヶ月か滞在してみたい。
本気でそう思うほど、この街の穏やかな空気と居心地のよさが気に入った。
もちろん、そんなことは無理。無理であるならば、早めに立ち去った方がいいのかもしれない。
名残惜しくはあるが、明日、ここを発つことにした。

昨日、バスで隣り合わせた日本人の男が言ったことを思い出していた。
エッサウィラ。彼の言うとおり、最高の街だった。

が、まさか、旅の終わりにこの街に戻ってきたその彼と同じように、
このぼくまでもが、エッサウィラに舞い戻ることになろうとは。
このときには、そんなことなどまったく予想していなかった。
17/17