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「路地で迷子」を楽しみ、フナ広場に戻ったときには、日暮れが迫っていた。すでに太陽は、クトゥビアの背より低い位置まで高度を下げていた。どこか見晴らしがよくて静かな場所で夕日を眺めてみたい。あのクトゥビアの西側に広がるメナラ庭園は、それにふさわしい場所のような気がした。

フナ広場の前で捕まえたタクシーを降りた。目の前に、広い道が一直線に延びている。広大な庭園だ。左右のオリーブ林を眺めながらしばらく歩くと、塀に囲まれた貯水池が見えてきた。階段を上り、池の縁に立った。正面に輝く夕陽と、水面に反射している光の波が降りかかってきた。まぶしく、美しい。

貯水池の縁に腰を下ろした。家族や友人、カップルが思い思いに散歩したり、談笑したりしている。

池の彼方には、雪を頂いたオートアトラスの山々が見える。前の旅ではあの山脈を越えてメルズーガの砂漠へと向かった。幻想的で力強いオレンジの砂漠。その磁力にはあらがいがたい。けれどもいまは、その砂漠以上に強くぼくを惹きつける何かがあった。あの山並みの向こうではなく、もっと別の方向に。
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