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チュニス・マリン駅から、TGMと呼ばれる郊外電車に乗り込んだ。
遺跡地区のカルタゴを通ってシディ・ブ・サイドへと延びる鉄道である。
名所旧跡を通るとはいえ、乗り込んでいるのはほとんど地元の人だった。
たった二両の電車なので、車内は混み合っていた。そのうえエアコンも付いていないので暑くてたまらない。窓の向こうに広がる青い海を見ながら暑さを忘れようと努めるしかなかった。
カルタゴに近づいた頃になってようやく車内が空き始め、シートに腰を下ろすことができた。午前中からの曇り空が続くようなら、カルタゴで降りて遺跡を回ろうと考えていたが、幸い、雲は消えかけ、青空が広がりつつあった。これならばシディ・ブ・サイドの魅力を堪能できそうだ。なんてったって、「青と白の町」なのだ。壁は白く輝き、チュニジアン・ブルーのとびらが彩りを添える……。そんな地中海チックな町を味わい尽くすには、太陽の輝きが不可欠だ。
シディ・ブ・サイド駅に降り立った。すでに駅からして青と白のツートーンに統一されている。期待が高まる。10分ほど歩き、きつい坂道を上っていくと、いよいよシディ・ブ・サイドの家並みが姿を現し始めた。メインストリートには土産物屋が並んでいて一瞬興ざめしたのだが、一歩路地に入り込んでみると、そこには別世界が静かに広がっていた。 |
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