 |
路地を歩いていると、また子供たちに囲まれた。一人を撮ってあげると、ぼくも、わたしもと大勢で迫ってくる。カメラを強引につかもうとする子までいる。これはちょっとやばい。
ちょうどそのとき、どこからかおじいさんが現れて、やや厳しい口調で子供たちをたしなめた。
「アイブ、アイブ」
そう聞こえた。その言葉の意味するところは、なんとなく知っていた。恥を知れ、と言っているのだ。その老人のおかげでようやく子供たちの輪から解放された。
サナアは高度な自治都市として何百年にもわたって機能し、存続してきている。自分の子どもじゃなくても、きちんと注意できる慣習があり、濃密な近所づきあいがあり、「恥」や「名誉」の概念がそこにはある。それを理解できるような気がしたのは、日本にも、少なくともかつては同じような慣習、文化があったからなのかもしれない。 |
|
Sanaa: 9/22  |
|