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しばらく歌と踊りを楽しませてもらったのち、本来見に行くはずだった結婚式の会場へと移動する。
こちらの結婚式も負けず劣らず盛大だ。
男たちがあるときは輪になって、あるときは一列になって、あるときはペアで、あるときは花婿も加わって、ともに祝う。広場にこだまする歌声。どこか哀愁を帯びた旋律。
楽士たちに目をやると、中央にウード奏者を見つけた。ウードは日本の琵琶や西洋のリュート、ギターの原型となり、『千夜一夜物語』にも登場する由緒ある楽器。イエメンの結婚式でも生演奏にお目にかかる機会は減ってきているらしいから、間近で演奏を見ることができるのはラッキーなのかもしれない。
歌とリズムと踊りが続く。
裸電球の明かり、取り囲む最古の摩天楼。
それが渾然一体となって五感を揺さぶり、しびれさせ、現実と夢の境界を曖昧にしていく。
目の前の光景は現実なのか、幻想なのか。
が、今自分はたしかに、サナアにいるのだ。最古の摩天楼に。
やっぱり訪れてよかった。なぜだか知らないけれど、安堵を覚えた。
安堵だけではない。このサナアという町に次第に魅入られつつある。
そのことを自覚していた。心地よい自覚だった。
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Sanaa: 21/22 |
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