今朝もまた、庭先から聞こえるほうきの音で目が覚める。このロスメンのスタッフはとても掃除好きだ。庭も部屋も常にきれいに保たれていて気持ちがいい。ザッ、ザッという掃き掃除の心地よいリズムを聞きながらのウトウトは最高だ。8時になり、ようやく起き上がって外に出た。視界に飛び込んでくるライスフィールド。色鮮やかに輝いている。その景色と空気を満喫していると、スタッフが朝食を持ってきてくれる。僕が起きたことをどのように知ったのだろう。驚いてしまうほどのタイミングの良さなのだ。テーブルに置かれたのは、トーストフルーツの盛り合わせ。朝からビタミンCをたっぷり摂れるのが、健康的でうれしい。
昨日は、通りを散歩したり、カフェでボーっとしたり、宿で文庫本を読んだりしてゆっくり過ごした。日中の暑さは半端ではないし、午後は決まって雨が降るので、必然的にこうしたまったりモードになってしまうのだが、こんな過ごし方が心地よい。
ウブドのはずれにあるアルマ美術館に行くことにした。宿でレンタルした自転車に乗り、ハヌマン通りを下ってアルマ美術館に向かった。ウブドの散策には自転車が便利だ。ただし、道が狭いので、自動車には十分に注意する必要がある。
「芸能の村」ウブドには、たくさんのギャラリーが散らばっている。アルマもその中のひとつ。広い庭園の中にいくつかの館が建てられている。館内も広々としている。ゆったりとした空間の中で、落ち着いて絵画を鑑賞できる。観賞後、館内のカフェでコーヒーを飲んだ。これは無料。シナモン入りのバリ式コーヒーはとてもおいしかった。
優雅なひとときを過ごしたのち、モンキーフォレストに向かった。ウブドの中では唯一の観光地らしい場所と言える。フォレストといっても、日本のどこか女性的な森林とは違い、男性的でまさに熱帯雨林といった感じ。シェムリアップと同じように、幹の太い木々が空高く伸びている。ここはその名の通り猿が群生しているのだが、思っていたほど姿を見かけなかった。森林の奥には寺院がある。入ってみると、建物はきれいに飾られ、境内にはたくさんのお供えが置かれていた。もうすぐ祭礼があるらしい。オダランが近づいているのだろうか。それとも、もうすぐニュピ(新年)なので、そのための準備だろうか?
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モンキーフォレスト内にある寺院。
祭礼が近づいているらしく、装飾が
なされている。 |
モンキーフォレストにて。
猿と猪(?)のにらみ合い。 |
モンキーフォレストをあとにし、同じ名前の通りでおみやげをいくつか買った。その後、「パディプラダ」というレストランでランチを食べた。2階にあるこのレストランの南側には、ライスフィールドが一面に広がっていて、眺めがとても素晴らしかった。ウブドでは、このレストランと、その隣の「トロピカルカフェ」が僕のお気に入りとなっていた。
ランチを食べて外に出ると、いつものとおり雨が降り出したので、急いで宿に戻った。雨といっても全天が雨雲に覆われているというわけではなく、ところどころ陽がのぞいている。夕方までには晴れ上がるだろう。それまでは、テラスで読書したり、景色を眺めたりして過ごせばよい。
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ウブドに来てから、1週間が過ぎた。ウブドの波長がとても心地よく感じられてきた。朝、昼、夜と、この心安らぐ田園風景を眺め、そこで働く人々や、供物を捧げる女性たちの姿を見ているうちに、バリの人たちが常に自然と神々に感謝を捧げ、それらと一体となって生きているということが、肌で感じられるようになってきた。その生き方は、ヒンズー教が伝わって以来、変わらずに受け継がれてきたものなのだろう。でも、そのおおもとの起源は、それよりもっと昔にあるような気がしてならない。
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有史以前、太平洋上にはムーという大陸があったと言われているが、もしかしたら、バリの信仰のルーツはその幻の大陸にまでさかのぼるのかもしれない。バリが「最後の楽園」と呼ばれているのは、その大陸の信仰を色濃く残しているからではないか・・・。とにかく、この生活のリズムは、とても気持ちの良いものだった。このリズムに溶け込んだまま過ごせたらどんなにかいいだろう。
たが、そのウブドとも、明日でお別れしなければならない。あさっての朝は、ジョグジャカルタに飛ぶことになっている。そのため、明日は空港に近いリゾート地、サヌールに宿を取ることにしたのだ。
ウブド最後の夜には、ティルタサリというグループの舞踊を見に行った。ウブドには多数の舞踊グループがあり、毎夜のごとく、あちこちで迫力あるパフォーマンスが繰り広げられる。ティルタサリは、その中でも最高の舞踊を見せてくれると評判だった。人気グループらしく、会場は満員である。噂に違わず、舞踊はどれも素晴らしかった。中でも目を奪われたのが、レゴンダンスだ。ビダニという有名な踊り手が出演するというので楽しみにしていたのだが、実際に目にして、その華麗で美しい舞にすっかり魅せられてしまった。本当に、女神が舞っているかのようだった。また、最後に演じられたバロンダンスも迫力があり、圧倒させられた。ウブド最後の夜に最高の舞踊を見ることができたのがうれしくもあり、満足を覚えた。
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