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雑木林を抜けると、視界が一気に開け、いっそうまばゆい光と鮮やかな色に包まれた。左右には緑の田んぼがさあーっと広がっている。正面には、やや西に傾いた太陽が衰える気配も見せず、強烈な熱と光を放っている。バンビエンの村からも望むことができる奇怪な山々との距離もいつの間にかぐっと縮まり、予想外の迫力でそびえている。
道ばたに自転車を止めて眺めを楽しんでいると、学校帰りの子供たちがやってくる。緑の稲穂の波を、白い制服が行き交う。まぶしく、どこか懐かしい。
再び自転車にまたがった。目の前を、制服を着た二人の子供が歩いている。兄弟かもしれない。自転車にも、トラクターにも乗らない。ぼくたちは元気に仲良く歩いて下校中、というような、たくましく、ほのぼのとした雰囲気が背中から伝わってくる。
二人の横を通り過ぎようとすると、大きい方の男の子が、待ってましたとばかり、ぼくの自転車の後ろに飛び乗ろうとするではないか。おいおい、よせって。そう叫びながら、危ないのでいったん自転車を止める。ちゃっかり飛び乗る少年。せっかくそのけなげな姿に感心してやったところだったのに。しょーがねーなー、乗せてやるけど、ちょっとだけだぞ。
楽ができるお兄ちゃんはニンマリ。弟のほうはといえば、小走りでぼくの自転車を懸命に追いかけてくるも、やがてあきらめ、トボトボと歩き出した。かわいそうだから、もう少し走ったらあの子も乗せてあげないと。しかし、後ろにしがみついているお兄ちゃんは、いったん獲得した座席を譲る気はさらさらなさそうに見える。
正面から、陽射しがじりじりと照りつける。容赦のない照射を浴びながらペダルを回していく。でこぼこの砂利道は、行けども行けども続いている。兄弟の家はいったいどこなのだろう。心配になって後ろを振り向くと、小さい弟は別の旅行者の自転車にちゃっかり乗って追っかけてくるではないか。弟もなかなかやるなあ。
まったく、ずるしやがって。最初はそんなふうに思った。が、こんな厳しい暑さの中、毎日毎日この兄弟はこんなにも長い距離を歩いて往復しているのだ。ときどき観光客の自転車の助けを借りたって、ばちはあたらないだろう。
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