何分くらい走っただろうか。突然、「ここで降りる」というようなジェスチャーをお兄ちゃんがして見せた。こんなところで? 見渡してもあたりに家は見あたらない。右側は草むらの斜面になっているし、左側には牛が放たれているだけだ。とにかく、自転車を止めてみた。少年は黙って自転車を降りた。

別れ際、少年に向かってカメラを向けた。突然のことでやや緊張気味の表情を見せている。けれども、緊張をほぐすような言葉は、あえて口には出さなかった。今のこの引き締まった表情のほうが、彼のたくましさをよく表しているような気がしたからだ。

そのまま、黙ってシャッターを切った。

じゃあ。お互い軽く手を振り合った。少年は道を外れ、草の斜面を黙々と登っていった。

来た道へと視線を動かすと、遠くから弟がゆっくりと近づいてくる。その姿を確認すると、再び自転車にまたがった。

砂利道は、まだまだどこかへと続いている。