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翌日も、気持ちのいい青空が広がっていた。

何をするでもなく午前中をブラブラ過ごし、午後2時、メディナの中心部にあるカフェ「シェ・ドリス」に向かった。エッサウィラで最も名の知れたカフェというが、その入口はとても控えめだった。通りを何度か行ったり来たりして、ようやく入口を見つけ、入ってみる。内部は薄暗い。カフェとパンを注文して、テーブルへ。

しばらくすると、日本人らしき女性が自転車を押しながら店に入ってきた。
自然と目が合った。
「あづま川さんですか?」
「はい、じゃあ、あなたがYさんですね? はじめまして」
「はじめまして」

Yさんは、エッサウィラに在住している日本人女性である。どういうきっかけか、以前からぼくのブログを見てくれていた。そんなことなどぼくはぜんぜん知らなかったし、Yさんのほうもぼくがモロッコに来ることなどまったく知らなかった。が、「モロッコにいます、今マラケシュです」とぼくがブログで初めて明かしたとき、偶然にもYさんはその記事をタイミングよく読んでくれ、エッサウィラに来るならぜひ会いませんか、とメールをくれたのだった。なのに、それ以来メールチェックを怠っていたぼくは、彼女からのメールを読むことなくエッサウィラを去ってしまったのだった。そのメールを読んだのは、数日後、エッサウィラからバスで十数時間も離れたアシラでのことだった。

後悔しきり、とはこのことだった。まさか、ぼくのブログを読んでくれている人がエッサウィラにいるなんて、メールまで送ってくれていたなんて……。けれども、やがてこう思うようになった。もう一度エッサウィラに行ってみようか、と。これもきっと何かの縁だろう。エッサウィラに住んでいるという女性がどんな人で、何をしているのかにも興味がある。それに、モロッコの旅の終わりをエッサウィラで迎えるというのもいいアイデアだ。1週間前、エッサウィラ行きのバスで一緒になった日本人も同じことを言っていたではないか。ひょっとしたら、彼のその言葉はぼくに対する予言でもあったのかもしれない……。都合がいい考えではあるが、そんな理由をこしらえたぼくは、おととい、バスと電車を乗り継いでマラケシュに戻り、一泊したのち、再びここエッサウィラに戻ってきたというわけである。その間、Yさんと何度かメールをやりとりし、今ようやくこうして会うことができた。

Essaouira: 6/10