 |
|
堅牢な城門をくぐり抜け、一歩中へと足を踏み入れると、目の前には別世界があった。石畳の小道に沿って、白壁の家並みが続いている。屋根の赤煉瓦が、そのまぶしさを引き立てている。
感動に浸っているところへ、一人の男が近づいてきた。宿が決まってなければ、私の母がやっている宿へどうぞ、とホテルカードを差し出す。宿を確保できるかどうか、アクセスの不便さをのぞけば、この地を訪れるにあたって唯一の心配の種がそのことだったのだが、これで一安心だ。
石畳を歩いていくと、おばあさんが立っていた。ぼくと目が合うと、いらっしゃい、というように手で合図をすると、そばの扉をあける。ここが宿なのかな。さっきの男のお母さんなのかな。きっとそうなのだろう。うながされるまま、扉をくぐった。それがごく自然なことと感じられたのは、この小さい村ならではの雰囲気のせいなのだろう。
部屋の窓からの見晴らしは抜群だった。ベランダの彼方には、アレンテージョのたおやかな平原が広がり、遙か地平線まで見渡せる。日本から、はるばるこの丘まで来てしまったのだ、本当に。
|
|
Monsaraz: 4/18  |
|