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教会を出ると、裏手に回ってみた。
見渡す限りの平原。
時の流れが、一瞬、止まった。
隣を見ると、ぼくと同じように、犬も平原を見下ろしている。さすがはサウダーデの国。人間だけではなく、犬にも哀愁が漂っている。しかも、哀愁旅人になりきったつもりでいるぼくよりずっと決まっているではないか。やはり哀愁は歴史と風土が育てるのだろうか……。
取り残されたような丘の上の村。この村で生まれ、この村で過ごし、一度もこの村を出ることなく死んでいく住人もいるという。この犬もそうなのかなあ。彼方の地平線を眺めながら、遠い異国の旅人と戯れながら、そして、もうすぐ奏でられるであろう「沈黙の音」を待ちながら、こいつはいったい何を想っているのだろう。
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Monsaraz: 10/18  |
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