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4日間滞在したフェスを発つことにした。旧市街横のターミナルから、正午発のバスに乗り込む。行き先は、シャウエン。
フェスを離れると、いつのまにか車窓には緑豊かな小丘がうねるように広がっていた。やがてリフ山脈にぶつかると、一転して荒々しい山並みが展開され始める。移り変わりの激しい景観を眺めるともなしに眺めているうちに4時間が過ぎた。ひときわ長く厳し峠を越えきると、突然、視界が遙か遠くまで開け、同時に長い下り坂に入った。ようやく山道が終わったのか。しかし前方を見やれば、山肌が露出した荒々しいリフ山脈が依然として彼方まで続いている。案の定、坂を下りきったバスは、そのリフ山脈に向かってエンジンを唸らせながら挑みかかるように突入していく。と、山の中腹あたりに、白い家の群れが。
2000メートル級の山の中腹にひっそりと広がるシャウエン。初めて目にするその白い塊は、メルズーガの砂漠はもちろんのこと、マラケシュやさっきまで滞在していたフェスとも大きく異なる印象を投げかけてきた。アプローチの仕方から、気候、地形、たたずまいに至るまで、本当に同じ国にいるのかと驚いてしまうほどに。モロッコという国の風土の多様性に今さらながらあっけにとられ、感嘆を隠せなかった。
新市街でバスを降りた。陽射しは強いものの、高原の空気は爽やかだ。メディナは向かいの山すそに広がっているらしい。手頃な宿もメディナの中に散在しているのだろう。道ばたの標識に従って狭い坂道を上ってみることにした。まずは宿の確保だ。
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