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   3.  カスバへ  ―  ワルザザート
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バスは定刻どおり9時半に出発した。

道はしばらく平坦だったが、やがて緩やかな上り基調に変わり、ついには本格的な山道になった。いよいよ、オートアトラス山脈越えだ。この険しい山脈を越えてしまえば、そこはもう一面の荒野。サハラ砂漠の入口だ。その入り口に位置するワルザザートは、荒野の中のオアシス都市である。近郊には「カスバ」と呼ばれる要塞兼住居が散在しているため、それらの見学拠点となっている。

本格的な峠道に入る手前の集落でバスは一時停止。どうやら休憩のようだ。まだ朝食を取っていなかったので、目の前の簡素な食堂に入り、ケバブと丸パン、ミントティーを注文した。2階のテーブルから眺めるオートアトラスの峰々、そして澄み切った青空が素晴らしい。

30分ほどでバスは再び走り出した。これからどのような壮観が目の前に現れるのだろう。胸がワクワクしてきた・・・はずだったのだが、いつしか僕は、ウトウト状態に入ってしまっていた。寝不足のせいもあったが、どうやら、出発前に飲んだ酔い止め薬が予想以上に効き目を発揮してくれたようだ。たまにハッと目を覚ましては車窓の向こうの雄大な景色を見やるのだが、長くは目を開けていられず、いつの間にかまたうつらうつらしてしまう。


そんなことを繰り返しているうちに、バスは無事峠を越えたらしく、やがてワルザザートのバスターミナルに到着した。

それにしても、滅多に飲んだことがなかったので、酔い止め薬の効能がこれほど大きいとは思ってもみなかった。そのおかげで、難所と聞かされて心配していた峠でも車酔いはまったくしなかった。それはよかった。よかったのだが、オートアトラス越えには相当な期待も抱いて臨んだだけに、あまりにもあっけなく終わってしまい、物足りない気分が残ったのも否めない。もっとスリルと感動を味わいたかったのだが。