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カスバをおおかた歩き終えたところで、突然雲が広がりはじめた。かと思うと、雨模様に。散策はあきらめて、屋根のあるメディナに逃げ込む。立ち並ぶおみやげ屋をのぞいてみるも、買いたいものは見つからない。さらに歩いて新市街に戻ると、一軒のカフェで一服することにした。
雨はしばらく止みそうにない。ノートを開くと、ペンを走らせた。夜、ベッドの上でいざ1日分の印象を綴ろうと思ってもうまくいかないものだ。疲れから来る睡魔で考えがまとまらないし、すでに思い出せなくなっている出来事さえある。旅では1日の間にも数多くのシーンと出会い、さまざまな喜怒哀楽が去来する。とりわけ、今日はサレの街でさまざまな感情に襲われたので、忘れないうちに一気に記しておきたかった。
数ページ書いたところで手を休め、ふと目を上げて外を見る。日記の世界から、現実の世界に戻るまで、少しの間がある。この移行の瞬間が、けっこう好きだ。
雨はまだ降り止みそうにない。きっとこのまま夜まで降り続くのだろう。再挑戦を誓ったサレの街を訪れる気は、もう起きなかった。明日にはまた新しい目的地が待っている。 |
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Rabat: 12/12 |
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