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   9.  風のメディナ  ―  ティトゥアン
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アラームの音で、ベッドから起きた。
窓のない1階の部屋は薄暗かった。
朝の陽光を求めて屋上に出ると、強烈な輝き。
目がくらむと同時に、爽やかで乾いた空気が全身を包んだ。

光に目が慣れたので、周囲を見渡してみる。
あいかわらず町は青で満ちていた。
青い空。青いドア。青い壁、青い煙突・・・。
青には癒しの効果がある。この町で何日も羽を伸ばしてしまう旅行者が多いという話にも、なるほどとうなずいてしまう。

朝食を取りながら、今日の予定を考えた。
ここでゆっくり過ごそうか、それとも、さらに地中海側のティトゥアンに足を延ばしてみようか・・・。

迷った末、ティトゥアンに行くことに決めた。旧市街が世界遺産に登録されているというし、手付かずのメディナが残っているという話にも興味を引かれたからだ。

ティトゥアンは、シャウエンとタンジェの中間に位置している。明日はそのタンジェの港からフェリーに乗ってスペインへと渡るつもりでいるので、もし今日ティトゥアンに行くのであれば、そのままティトゥアンに宿を取った方が移動上は便利だ。



けれども僕は、あえて日帰りでティトゥアンを訪れ、時間のロスにはなるけれど、またシャウエンに戻ってくることにした。なんといってもこの町は居心地抜群だ。面倒な宿探しやパッキングも今日はしたくない。ここからタンジェに行くバスの運行状況が気がかりではあるが、これまでのモロッコでの移動経験から、朝早くから行動を起こせば何とかなると分かっていた。



宿を出ると、昨日の昼食時に書いたポストカードを投函して、ティトゥアン行きのグランタクシー乗り場へと向かった。

幸い、乗り場はすぐに見つかった。席もすぐに埋まったので、待つことなく出発できた。右手に切り立った山々を見ながら道を下ると、タクシーはひたすら北に進んでいった。

1時間後、大きな町に到着した。ティトゥアンに違いない。後部座席の男達がみなタクシーを降りたので、つられて一緒に降りた。が、タクシーが去った後、後悔することになった。どうやらここは新市街のどこかのようだが、地図を見ても、今立っている場所とメディナとの位置関係がまったくつかめない。もしかしたら、思いっきりはずれで降りてしまったのかもしれない。こうなったら、カンに頼るしかない。メディナがありそうな方向へと歩き出した。

通りは丘へと向かう坂になっている。その坂道をしばらく上ってみたが、目指すメディナはどこにも姿を現さなかった。
「もしかして、ここはティトゥアンではないのかも」
突然、そんな考えが脳裏をよぎり、冷や汗が吹き出した。そういえば、ガイドブックにはティトゥアンまで1時間半と書いてあった。1時間で着いてしまったということは、ティトゥアンの手前の町で降りてしまった可能性もある。うかつだった。降りる際に運転手に確認すればよかった・・・。

焦った僕は、元の場所へと戻ることにした。念のため、上ってきた道とは別の坂道を下ってみる。それが幸いした。見知らぬ大通りに出ると、左手に古びた門を発見した。もしかしたら、あそこがメディナの入口では・・・。急いでその門に向かった。


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