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    9.  風のメディナ  ―  ティトゥアン
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門をくぐると、そこはスークだった。狭い道がどこまでも続き、果物店がびっしりと並んでいた。

これまで歩いていた通りとはまったく別の世界が目の前に続いていた。引き込まれるように奥へと進んだ。歩いていくにつれ、店頭に並ぶ品物も、果物から日用品、金物、衣類、魚類と次々に変化していく。






ここはティトゥアンのメディナに間違いない。
そう確信した。
これほど大きいスークは他の町にないはずだし、なにより、手付かずのメディナ、という形容詞が、今歩いているこのメディナの特徴とぴったり合致していたからだ。

今歩いているメディナは、フェスのメディナに比べてローカル色がきわめて濃く、観光的な要素はほとんど見られなかった。扱っている商品も、いわゆる観光客向けとはっきりわかるものは目につかず、地元の人が買うような日用品ばかりが所狭しと並んでいた。途中、一人の絨毯屋が声をかけてきたが、それを除けば、異邦人である僕に商売目的で声をかけてくる人もいなかった。誰にも煩わされることなくメディナをうろつくことができる。あたかも、自分が透明人間になったかのような感覚。この不思議な浮遊感は、マラケシュでもフェスでも味わったことがないものであった。




露店が並ぶ通りをはずれ、丘に延びる坂道を上った。あたりは急にしーんと静まり返った。

白い家々が並んでいる。アンダルシアが近いことを肌で実感した。




子供たちも、フェスに比べてすれていない。はにかみやさんが多い。



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