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ムーレイイドリース廟の脇から延びる狭い坂を上る。
途中で道がいくつにも分岐している。規模も地理的条件も違うけれど、この複雑さはフェスに負けず劣らずといった感じだ。おじさんと一緒で正解だったかもしれない。
本当なら、1泊してのんびり路地歩きを楽しんでみたいところだ。しかし、残念ながら異教徒はこの地に泊まることができない。つい70年ほど前までは、この町に立ち入ることさえ禁止されていたのだ。イドリース1世が眠り、彼の名をいただくこの町は、モロッコ人にとっての聖地であり、最も重要な巡礼地なのだ。
それほど重要視されているだけに、先ほど訪れたボリュビリスの朽ち果てぶりが不思議であり、はかなさを誘われる。異教徒が作り上げた壮麗な神殿も、彼らにとっては石の塊でしかないのかもしれない。
しばらく路地を歩くと、珍しい形のミナレットが見えた。
ガイドによると、モロッコで唯一の円柱型ミナレットだそうだ。円柱の面には「アッラーのほかに神はなし」という文句が刻まれているという。
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