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   6.  ローマ遺跡  ―  ボリュビリス
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8世紀末、教祖ムハンマドの子孫であるイドリースという男がメッカで反乱を企てた。しかし反乱は失敗に終わり、イドリースは命からがらモロッコに逃げ延びた。ボリュビリスに定住した彼は、ベルベル部族の支援を得て、この地で自らの政権を打ち立てた。モロッコ初のイスラム王朝、イドリース朝の始まりである。

こうした歴史を見ると、ここボリュビリスは建国の地であり、モロッコ人にとってきわめて大切な聖地であるはずなのだ。けれども、いざ実際に歩いてみると、「聖地」あるいは「建国の地」という雰囲気はまったく感じられなかった。荒れるに任せているこの遺跡は、地元の人々にもまったく顧みられることのない、忘却の彼方の存在として僕の目には映った。すぐそばに位置するムーレイイドリースが巡礼地として大切に扱われているのとは対照的だ。不思議といえば不思議だ。もしかしたら、ローマ遺跡=西欧文明に対する反感、という気持ちも多少あるのかもしれない。


凱旋門から延びる大通りを進んだ。道の左右には、かつての邸宅が並んでいた。その中でひときわ印象的だったのが、この「円柱の館」だ。なぜかここだけ手入れが行き届いている様子で、赤い花まで咲き乱れていた。








ボリュビリスには、目を見張るような壮大な建物はほとんど残っていなかった。代わりに目を惹き付けられたのが、美しいモザイクの数々だ。魚、動物、神々などの姿が描かれたモザイクが遺跡内に散在している。遺跡をウロウロしていると突然こんな素晴らしいモザイクに遭遇するのでびっくりする。宝探し気分だ。
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