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エルジェムは、何の変哲もない小さな町。そんな町まで、ケロアンからわざわざルアージュを乗り継いでやってきたのは、ある有名な遺跡を見たかったからだ。ローマ帝国の時代に建造された、当時の最高の娯楽施設、円形闘技場である。アフリカで最も保存状態がよいとされ、世界遺産にも指定されていると聞いては、訪れないわけにはいかない。
ルアージュを降りた僕は、大通りに出た。あたりを見回したものの、お目当ての闘技場はどこにも見あたらない。街の中心部に横たわっているはずだから、どこからでも目につくとばかり思っていたのに。とはいえ、小さい街なのだから、ちょっと探せばすぐに見つかるだろう。カンを頼りに脇道に折れると、そのまま進んだ。
10分ほど歩くと、土産物屋が並んでいる幅の広い道に出た。ふと首を左へ振ると、探していた闘技場が目の前にどっかりと腰を下ろしていた。思わず、おーっと声を上げる。 |
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