

View from hotel in Kairouan |
タタウィンのルアージュステーションは、何の変哲もない通りの目立たない一角にあった。
うっかり見逃してしまうほど狭いゲートをくぐり、構内に入る。さっそく声をかけられた。
「どこへ行くんだ」
「ガベス」
男はうなずくと、手早くガベス行きのルアージュへと案内してくれた。モロッコにしろ、ここチュニジアにしろ、このあたりの人的誘導の仕組みは本当に良くできている。
ルアージュとは、主要都市間を走るいわゆる乗り合いタクシーである。グランタクシー、セルビスなど、国によって呼び名こそ違うが、イスラム圏ではポピュラーな移動手段だ。基本的に定員にならないと発車しないところも共通している。僕が乗り込んだのは8人乗りのミニバンだった。すでに車内では何人かの乗客が出発を待っていた。タイミングが良かったのか、僕が乗り込んでからまもなく座席がすべて埋まり、さほど待つことなくタタウィンを発つことができた。
今日は、タタウィンから一気に北上してケロアンにいくつもりだった。おとといバスでたどったチュニスからタタウィンへの道を、三分の二ほど引き返すことになる。今回、バスではなくルアージュを利用することにしたのは、バスステーションが町の郊外にあるから、そしておととい乗車した体験から、バスが効率的な移動手段だとは思えなかったからだ。それを裏付けるかのように、今乗っているルアージュはすぐに出発してくれた。乗り心地の点でも、バスに比べてはるかに快適だった。シートピッチが大きいので疲労度が小さい。
乗り継ぎ地のガベスには2時間ほどで到着した。ここでケロアン行きのルアージュを探すつもりだった。ガベスのステーションはタタウィンのそれよりずっと大規模だったが、にもかかわらず、ケロアン行きのルアージュはあっさりと見つかった。各車の前では運転手が「ケロアン、ケロアン」、「スファックス、スファックス」などと行き先を連呼しているからだ。文字情報だけであればお手上げだが、言葉にしてくれれば異邦人にも地名ぐらいは理解できる。
ここでもそれほど待たずに定員になり、ケロアンに向かって出発。
きわめて順調だ。こんなにスムーズに行くと最初からわかっていれば、チュニスからタタウィンへの移動にもルアージュを利用したのに。とにかく、これからはできるだけルアージュで移動することに決めた。 |