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霊廟をあとにした僕は、またメディナをうろつくことにした。

モスクの壮大さも霊廟の鮮やかさもそれぞれ印象的ではあったが、この町で最も魅力的なのは、メディナをあてどなく歩くことだった。角を曲がるたびに、意外な何かが待ちかまえている。それはネコであったり、ドアであったり、店であったり、ときには人であったりする。

ケロアンの人たちは総じてフレンドリーで、気軽に声をかけてくる。お決まりの「ジャッキーチェン」のほかにも、サッカー選手でいえば「ナカタ」、「タカハラ」、「カワグチ」などなど。こちとら、チュニジアの選手といえば「トラベルシ」くらいしか知らないのだけれど。

お金を無心してくる女性にも出会ったが、そういう人間は他の国にもいるものなので気にならないし、気にしないよう努めてもいた。ネガティブな気持ちを後に引きずっていてはせっかくの旅が台無しになる。損するのは結局は自分自身なのだ。それに実際、フレンドリーな人たちとの出会いの方が印象に残ったし、彼らのおかげでケロアンでの滞在が楽しいものになった。

歩き疲れたのでいったん宿に戻った。部屋のベッドに横になっていると、突然、アザーンの大音響が窓から飛び込んできて、部屋中を駆けめぐった。この町を包む雰囲気にもう少し身を浸していたい。耳を傾けていると、そうした思いが高まってくるが、心はすでに決まっていた。明日、次の目的地に向かおう。シチリアに渡るのは明後日の夜。それまでにどうしても訪れたい場所がまだ2つ残っている。
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