スキファ・エル・カーラと呼ばれる、そのいかにも頑丈そうな門をくぐった。薄暗い空間の向こうに、新雪のように真っ白なメディナが開けている。目の前の細い道を奥へとゆっくりたどっていく。観光色のない「手つかずのメディナ」を期待していたのだが、ツーリスト向けの店もちらほら見受けられ、少々がっかりした。けれども、ケロアンよりはローカル色がずっと強く、ひなびた雰囲気の中をそぞろ歩くのは心地よい。まばゆい白壁と、さりげない海風も清涼感を与えてくれる。悪くない。いや、かなりいいぞ、マハディア。
チュニジアではどこの町でもそうなのだが、とりわけここでは、日本人と見ると「ジャッキーシェン」と声をかけてくる男どもが多い。「チェン」ではなく「シェン」と発音するので笑ってしまう。声だけでくアクション付きの場合もある。あるときなどは、中年のおやじがいきなり目の前に現れて、冗談半分にお腹に向かってカンフーパンチを繰り出してきた。一瞬驚いたが、すぐに気を取り直し、負けずに回し蹴りをお見舞いしようとすると、当の男は顔を引きつらせて後ずさりする。本気で怖がっている。本当に面白いなー、マハディアのおっちゃんは。 |