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翌朝、6時半にチェックアウト。メインのバッグはチュニスに置いてあるので、パッキングは不要。楽なものだ。

フロントにたずねたところ、チュニス行きの最初のバスは7時半に来るという。それよりも早く、ここからテブルスークの集落まで登らなければならない。タクシーを呼ぶだけのディナールは手元に残っていない。当然、徒歩だ。さいわいなことに、ホテルの裏側から集落へと通じる近道があるという。その道をたどっていけばなんとか間に合いそうだ。

狭い砂利道を15分ほど上っただけで、あっさりと集落にたどり着いた。昨日のバス乗り場に行くと、たくさんの男女が思い思いにバスを待っていた。窓口も開いている。やれやれ、今日こそバスはやってきそうだ。チケットを買うと、そのまま待つことにした。

7時半過ぎ、1台のバスがやってきた。しかし、なぜかここには停車せずに通過してしまった。チュニス行きではなかったのだろうか。その1時間後、またバスが来た。チケットを売っていた男があわてて道路に飛び出して、止まれ止まれというように手を振る。けれども、彼の制止を無視するようにバスは走り去ってしまった。その様子を見るに、どうやら、バスはすでに満席で、ここで人を乗せる余裕がないらしい。

時計は9時を回っていた。またまた嫌な予感がしてきた。この様子では、次のバスに乗れるという保証はない。この村をいつ抜け出せるかわかったものではない。楽しみにしていたカルタゴ遺跡に行けなくなってしまうではないか。それどころか、今夜のシチリア行きフェリーに乗り遅れるおそれだってある。

こうなれば、チュニスからは遠ざかることになるが、空いている下りのバスでどこか大きい町に出て、そこでチュニス行きのバスに乗り込むか、ルアージュを探そう。遠回りになるけれど、それしか方法がない。そう思ったちょうどそのとき、目の前に下りバスが止まった。ル・ケフ行きだという。その名前ならガイドブックで目にしたことがある。きっと大きい町だ。よし、その町に行ってみよう。

急いで窓口に行き、その旨を伝えた。売り場の男は怪訝な顔をしたが、チュニスではなくル・ケフに行くのだと宣言してチケットを買った。道路に出てそのバスに乗ろうとした瞬間、我が目を疑った。なんと、反対車線に上り方面のバスが止まっているではないか。もしやあれがチュニス行きでは。急いでそっちのバスに向かった。一緒にバスを待っていた青年が、「チュニス行きだよ」と教えてくれた。ようやく停車してくれたのか。こうなれば、満席になっていようがいまいが乗り込むしかない。さいわい、乗り込んでみると空いているシートがあり、無事座ることができた。

9時40分。ようやくこの辺鄙なテブルスークを離れることができた。まったく朝からハラハラさせやがって。しかし、チュニスのバスは信頼できない。特に国営のSNTRIバスとの相性は最悪だった。いま乗っているバスは車体のカラーが違うので民間バスなのだろう。このバスが来なかったらいつまで経ってもチュニスに帰れないところだった。しかも、ル・ケフに行こうとして、ホテル代に加えてバス代まで二重払いしてしまったではないか。

チュニス市街に入ると、渋滞でバスが進まなくなり、またしてもイライラがつのる。チュニスのホテルを午前中にチェックアウトしなければ、延泊料金を取られてしまうかもしれない。窓からメトロの駅が見えた。あれに乗った方が早そうだ。バスを降ろさせてもらい、その駅に向かった。しかし、こんな時に限ってメトロがなかなかやってこなくてますますイライラ。結局、ホテルに着いたときには正午を過ぎてしまっていた。フロントにおそるおそるたずねると、いますぐチェックアウトすればOKという返事。あわてて部屋に向かうと、変わらぬ姿で置かれていた荷物を取ってフロントに戻った。

チェックアウトをすませると、フロントに日本人の女性が2名いるのに気がついた。珍しいので話しかけてみる。どちらも一人旅とのこと。一人旅の日本人なんて、男でさえこれまで一度も見かけなかったのに。久しぶりに日本語で旅話をしたかったけれど、あいにく時間がない。適当なところで切り上げさせてもらい、荷物をフロントに預けてホテルを出た。カルタゴ、カルタゴ。カルタゴに行かなくては。チュニジアに来てカルタゴに行かないでどうするよ。

銀行に寄り、カードでキャッシュを引き出す。こうなれば金より時間優先だ。大通りに出ると、タクシーをつかまえた。カルタゴまで15ディナールだという。料金交渉する時間も惜しかったので、言い値で乗ることに。とにかく急いで行ってくれ。

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