続いて、アントニウスの共同浴場に到着した。
先ほど訪れた劇場と同じく、この浴場も、建造したのはカルタゴではなく、カルタゴを滅ぼしてこの地を支配したローマである。敷地に入ってみると、予想以上の広大さ。ローマ人の風呂好きぶりに改めて驚き、あきれ果ててしまう。風呂好きが住む日本にだってこんな規模の公共浴場はきっとないだろう。
とはいえ、保存状態は決して良くない。二階建てだったという当時の面影はまったくといってよいほどない。しかも、周囲はハイソな住宅地であり、そばには官邸まであるという環境なので、目の前が地中海という抜群のロケーションにもかかわらず興醒めしてしまう。ローマ帝国時代の遺物がこれなのだから、そのローマに徹底的に破壊されたカルタゴの時代の遺跡がほとんど残っていないのも当然だ。周囲にはまだ遺跡が点在しているのだが、なんとなくそれらの状況もわかるような気がした。時刻は4時。まだ時間に余裕はあるけれど、遺跡巡りを切り上げてチュニスに戻ることにした。ドゥッガから大急ぎでやってきたのに、わずか3時間の見学で満足してしまうとは、うれしいやら悲しいやら。 |