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新市街のレストランで夕食をすませ、ホテルで荷物をピックアップ。大通りに出ると、タクシーをつかまえた。
「ラグレットまで」と出港地の名を告げた。
チュニス市街を抜ける頃には、車窓の向こう側はすっかり闇に包まれていた。右手に見える地中海も、漆黒の闇とほとんど同化して不気味にうごめいている。海岸沿いにポツリポツリと灯る明かりが、チュニジアを去る寂しさを増幅させる。感傷的になりすぎているのだろうか。
港に到着。カウンターでチェックインをすませると、張りつめていた緊張の糸が一気にゆるみ、安堵感と一緒に疲労感がどっとこみ上げてきた。まったく、今朝は一体どうなることかと思ったが、これでようやくシチリアに行ける……。
出国手続きがすむと、桟橋へと下りた。闇の中で、これから乗り込むフェリーが出航をじっと待っていた。疲労感が増すなか、新たな期待感がじわじわとこみ上げてきた。
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