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町の東はずれに向かってどんどん歩く。
やがて、通りの真向かいに、赤茶色の教会が見えてきた。サンタ・マリア・ディ・セルヴィという名の教会らしい。


















庭からは、シエナの旧市街が一望できた。シエナの中心があのドゥオモであることが、ここから眺めるとよくわかる。












さらに散策を続ける。
いったんカンポ広場の近くまで戻ると、道を右に折れ、今度は北のはずれに向かって進む。















とある教会の前にたどり着いた。名前はサン・フランチェスコ教会という。フランチェスコゆかりの地アッシジを訪れるのを断念した代わりというわけではないが、この教会はどうしても最後に訪れたかった。

11年前も、夕方、この教会を訪れた。有名ではないこの教会を見てみようと思ったのは、「広場からの眺望が素晴らしい」とガイドブックに書かれていたからだったと記憶している。だが、実際の眺めがどうであったのかとなると、まるで覚えがない。覚えがないということは、たいした眺めではなかったのだろう。それよりも印象的だったのは、内部のステンドグラスだった。扉を開けると、驚くほど質素な、ガランとした空間が広がっていた。静まりかえった暗闇の中、一条の光が射し込んでいた。見上げると、まばゆい輝きを発する円形のステンドグラスがあった。粗末ともいえる空間の中で、そこだけが神々しく、その輝きがいまでも脳裏に焼きついていた。

そのサン・フランチェスコ教会を、いま目の前にしている。が、正面の広場に立つことはかなわなかった。かつての広場は、味気ない駐車場へと姿を変えてしまっていたのだ。眺望はといえば……覚えていないのも仕方ないな、と納得してしまう程度のものであった。

内部に入ってみる。壁も床もすっかりきれいに整備されている。祭壇もずいぶんと立派なものが置かれている。大がかりな改装でもなされたのだろうか。記憶では、内部は驚くほど質素な作りだったはずで、さすがフランチェスコの清貧の精神を体現した教会は違うな、と感心したのを覚えているのだが……。

高い天井を見上げてみる。入口の上方に、あの円形のステンドグラスを見つけることができた。この輝きだけは、昔と変わっていなかった。できることならば、扉を閉め切り、明かりもすべて消してみたかった。もちろん、そんなことをできるわけもない。

ここに限っては、11年前の記憶を壊さずにとっておくほうがよさそうだ。
見学もそこそこに、静かに外に出た。
 
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