
Guermeesa |
次の目的地はシェニニ。丘の上に形成された典型的なベルベルの集落ということだった。ボロ車は今のところ快調のようだ。道の左右には、石と砂だけの単調な世界が広がっていた。それだけに、遠くにそびえる荒々しい小山の連なりが凄みを帯びて見え、ごく自然に目が引きつけられた。その頂のひとつには、アリの巣のような穴がいくつもあいていた。よく見ると、それは集落だった。まるでカメレオンのようにその家々は山肌と一体化していた。車を停めてもらい、その異様な姿を眺めた。ゲルマッサという集落だという。あんな険しい山の頂に住んでいて、いったい水はどうやって確保するのだろう。モロッコの砂漠地域でもベルベル人の苦しい生活の一端を目の当たりにしたが、この地の環境も相当に過酷だ。今では住民はふもとで生活しているとのことだが、かつては確かにあそこに住んでいたのだろう。追いやられた少数民族がその文化を固持・継承してくのは並大抵のことではない。
さらに何キロか走り、シェニニに到着した。丘のふもとに立つと、先ほど眺めたのと同じ穴が僕を取り囲むように並んでいた。圧倒される光景だった。ここではまだベルベル人が生活していた。不謹慎かもしれないが、人間、住もうと思えばどんなところにも住めるんだなあというのが、旅行者である僕が第一に抱いた感想だった。ただ、遠からぬ将来、この村も完全に見捨てられてしまう日がやって来るのかもしれない。さきほど見たゲルマッサがそうだったように。 |
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