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しばらく部屋で休んでいたが、ちょうど4時頃、アザーンの響きが聞こえてきた。その大声に促されるように、外を歩いてみようという気になった。
ホテルを出てみる。さっきの男の姿はない。これで安心だ。迷路のような安宿街を抜ける。すぐ目の前に、巨大な空間が広がっていた。おお、ここがフナ広場か。まだ日が高いせいか、活気は見られないが、オレンジジュース屋台が楕円状に何十軒も並んでいる様は壮観だった。一杯飲みたい衝動にかられたが、お腹の具合が心配だった。今は我慢で見送って、その先に広がるスークに向かった。
衣服店が連なる比較的広い路地を通過すると、薄暗さがいちだんと増してきた。いよいよ本格的なスークの始まりか。奥へ奥へと進んでみる。布地を扱う店が連なっているかと思えば、次は貴金属の店がずらりと並んでいる。通りを進むにつれて表情がさまざまに変化していく。確かにそれを眺めているのは楽しい。でもいまいち物足りない。
「うーん、こんな感じか。そんなにたいしたことはないな」
そんな印象だった。規模こそ劣るけど、去年訪れたシリアのアレッポのスークのほうがもっと情緒があり、ゾクゾク感も高かったような気がする。 |