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   2.  喧噪と静寂  ―  マラケシュ
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薄暗いスークを抜けると、突然、青空と太陽が現れた。
有名なベンユーセフモスクのミナレットが見えてきた。
あっさりたどり着いてしまったので、やや拍子抜け。迷宮とか言われているけど、意外と単純ではないか。

さらに奥へと道をたどってみる。と、向こうから一人の男が近づいてきた
「タンネリに行きたいんだろ。案内してやろう」
タンネリ? なめし革工場のことか。フェズのタンネリは有名だけど、マラケシュにもあるのか。が、案内してもらう気はさらさらない。
「ノン メルシー」
そう答えて奥へ進もうとする。男は離れようとしない。ウワサの自称ガイドか。イヤな奴と出会っちまったな。せっかくよさげな路地を見つけたというのに……。仕方がないので、来た道を引き返すことにした。男はそれ以上深くは追ってこなかった。縄張りでもあるのかもしれない。ホッと胸をなで下ろした。マラケシュのメディナ、意外と与しやすしと思ったけれど、やはり一筋縄ではいかないみたいだ。

とはいえ、このまま引き下がっては面白くない。方角を変え、別の一画を探訪してみることにする。
いつの間にか、人影や物音がめっきり減っていた。
暗く、細い路地が出現した。異様に背の高い壁。マラケシュレッドとでも形容すべき、独特の淡い赤に囲まれた世界。それが迷路のようにどこまでも続いている。

「そうそう、求めていたのは、こういう路地なのだよ」
喧噪のスークはいまひとつピンとこなかったけれど、目の前に延びる路地の雰囲気はじつに魅力的。さっきのガイドのことも忘れ、知らず知らず奥へと足を進め始めていた。

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