毎度のことながら、身支度とパッキングに時間がかかった。オスタルをチェックアウトしたのは、グラナダ行きの路線バスが出発するわずか数分前。が、バス乗り場はこのホテルのすぐ隣だから大丈夫だろう。エレベーターを降りて外に出ると、大通りに数台のバスが連なって停車していた。その中からグラナダ行きのバスを見つけると、車体下部の荷物室にバッグを押し込んだ。
荷物室のそばに係員が誰もいないのが気がかりだった。ドアは開け放たれたままなので、置き引きしようと思えば難なく成功しそうだ。モロッコでは、荷物代は別途払うものの、係員が荷物を常に監視してくれていたから、預け荷物についてはほとんど心配要らずだった。それだけに、この放置状態は僕を不安にさせた。モロッコに比べて治安が格段によいとはとても思えなかった。このまま出発まで監視していようかとも思ったが、そんなことをしている乗客もほかにいない。大丈夫だろうと自分に言い聞かせてバスに乗り込んだ。少し神経質になり過ぎているのかもしれない。 |