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   アンダルシア 2.  アルハンブラへ  ―  グラナダ
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毎度のことながら、身支度とパッキングに時間がかかった。オスタルをチェックアウトしたのは、グラナダ行きの路線バスが出発するわずか数分前。が、バス乗り場はこのホテルのすぐ隣だから大丈夫だろう。エレベーターを降りて外に出ると、大通りに数台のバスが連なって停車していた。その中からグラナダ行きのバスを見つけると、車体下部の荷物室にバッグを押し込んだ。

荷物室のそばに係員が誰もいないのが気がかりだった。ドアは開け放たれたままなので、置き引きしようと思えば難なく成功しそうだ。モロッコでは、荷物代は別途払うものの、係員が荷物を常に監視してくれていたから、預け荷物についてはほとんど心配要らずだった。それだけに、この放置状態は僕を不安にさせた。モロッコに比べて治安が格段によいとはとても思えなかった。このまま出発まで監視していようかとも思ったが、そんなことをしている乗客もほかにいない。大丈夫だろうと自分に言い聞かせてバスに乗り込んだ。少し神経質になり過ぎているのかもしれない。

バスは定刻を若干過ぎてから発車した。右手には、あこがれのコスタ・デル・ソルがどこまでも続いていた。けれども、僕のイメージしていた「太陽の海岸」はそこにはなかった。

「日本海のどこかの海岸線とたいして変わらないじゃん」

それが第一印象だった。あいにくの曇り空だったせいもあるが、意外と醒めている自分自身に少々びっくりした。

バスは1時間ほどで「太陽海岸」の中心都市マラガに到着した。ここで新しい客を乗せると、再び発車。今度こそ本当の「太陽の海岸」が現れるのではという期待もむなしく、バスは突然コスタ・デル・ソルに背を向けると、進路を内陸部へと取った。「陽光降り注ぐ南国のビーチ」的な景観を目にすることのないまま、グラナダに向かうことになった。なんだかなー。

グラナダのバスターミナルに到着したのは正午近くだった。すぐにローカルバスに乗り換えて市街に向かった。王室礼拝堂の近くでバスを降りると、ゴメレス坂を目指した。手頃なオスタルが集まっていると聞いていたし、アルハンブラ宮殿にも近くて観光に便利だと思ったからだ。

ゴメレス坂は予想以上に細くて急だった。懸命に上っていくと、オスタルが何軒か目に入ってきた。そのうちの一軒にあたってみると、運のいいことに空き部屋はあるという。また坂道を上って別の宿にあたるのも面倒なので、迷わずこの宿に泊まることに決めた。

時刻は午後1時をまわったところだった。とにかく暑かった。疲れもたまっていた。すぐさま観光に出かけたい気持ちもあったが、ここはスペインの習慣に倣ってシエスタにしたほうがよさそうだ。はやる心を抑え、しばらくベッドで横になることにした。


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