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   アンダルシア 2.  アルハンブラへ  ―  グラナダ
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アルカサバは、丘の西端を取り囲むように築かれた堅牢な要塞だ。アルハンブラの歴史は、このアルカサバの建造から始まっている。

レコンキスタ(国土回復運動)が勢いを増す中、1212年、北アフリカとアル・アンダルスを支配していたムワッヒド朝とキリスト教軍が激突。その結果は、ムワッヒド朝の大敗。この地におけるイスラムの支配権は完全に失われようとしていた。グラナダを首都とするナスル朝が奇跡的に成立したのは、その20年後のこと。そのナスル朝が、なにをおいてもアルカサバの建造に着手したのには、こうした危機的な時代背景があった。

そんな歴史的背景を考えてみれば、昨日、サンニコラス広場から望んだアルハンブラが、統一性にも優雅さにも欠けているように見えたのも、実は当然のことだった。レコンキスタ勢力の目に、夢の宮殿、地上天国のように映ったならば、アルハンブラはずっと早い時期に陥落していたに違いない。

アルハンブラに現在の形の宮殿が完成したのは、それから1世紀あまり後の14世紀末のこと。しかし、そのときすでに、ナスル朝の命運は風前のともしびだった。滅びに至るまでの悲しい物語は、ご存知の通り。


城壁から突き出ている塔に上ってみた。風が強い。見下ろすと、そこは切り立った崖。めまいがしそうだ。

ここからは、グラナダの新市街とアルバイシンを一望の下に見渡すことができた。昨日訪れたサンニコラス広場も、はるかかなたに見分けることができた。


最後の目的地は、ヘネラリーフェ離宮。

水と緑にあふれるこの宮殿は、まさにオアシス、地上の楽園だ。旅行前にイメージしていたアルハンブラは、王宮ではなくこの離宮にあったといってもいいくらいだ。本当に優雅で美しい。そんな感想をもらしながらガイドブックをめくってみると、この庭は20世紀に造園されたものだとわかり、ずっこけた。ヘネラリーフェ離宮はこの庭の先にあるとのこと。それを先に言ってくれよ・・・。


ようやく離宮に到着、と思いきや、なんと、割堀と噴水で有名な「アセキアの中庭」は修復中とのこと。アルハンブラの中でもライオン宮と並んで一番の見所として楽しみにしていたのに、修復中とは運が悪い。

「アセキアの中庭」の前で引き返し、隣にある「スルタナの糸杉の中庭」を散策して、アルハンブラ巡りを終えた。時計の針は5時を回っていた。日没まで時間があるのでまだまだ見学はできるのだが、買い物などもしておきたかったし、なによりもう体がクタクタだ。いったん宿に戻ることにした。

初めて訪れたアルハンブラは、昨日サンニコラス広場でひそかに恐れたような「がっかり名所」ではなかった。むしろ、歴史的、建築的に興味深い見所の連続で、最後は正直お腹いっぱいになってしまった。それらを噛み砕き、飲み込むだけの知的キャパシティがまだ自分の中にはない。そのことを痛感した。それはなにも今回に限らず、いつも感じることではあるけれど。

何年後になるかわからないけれど、またこの地を訪れたときに、「なるほどなるほど」と感心、納得しながら宮殿内を歩き回っている自分でありたいと思った。そのときにはアセキアの中庭もとっくに修復されているだろう。

宿に戻ると、ベッドにどっと倒れ込んだ。1時間ほどシエスタを取り、再び外出。ショッピングとメールチェックを済ませると、お腹が猛烈に空いてきた。さっそく近くのレストランで夕食。前菜は生ハムメロンとエビのディナー、メインはエビの炒め物。

飲み物はサングリアを一杯。アルコールは苦手なので、ワインは基本的に飲まない。飲む場合は必ずミネラルウォーターも頼む。ワインだけだとすぐに顔が真っ赤になってしまい、非常に恥ずかしいのだ。食事後すぐに宿に戻るのならそれでもかまわないのだが、今夜はこのあとフラメンコを見に行くので、なおさら飲めない。サングリアかセルベッサ一杯が僕にはちょうど適量だ。


送迎パスにピックアップしてもらって、アルバイシン地区のタブラオへ。本場のフラメンコ鑑賞は今回が初めて。グラナダのフラメンコは泥臭いと言われているそうだが、実際に鑑賞した印象は、「それもまたよし」だった。

納得がいかなかったのは、フラッシュを焚いて写真を撮ったら注意されたこと。いや、全員注意されたのならば納得がいく。しかし、どうみても一部の人だけが注意を受け、他の人は見逃されているようなのだ。単なる思い違いなのかもしれないが、特定の客だけが優遇されているような感じがして、気分がよろしくなかった。フラメンコ自体は素晴らしかっただけにちょっぴり残念。

宿に戻ったのは12時。明日はコルドバに向かう。今朝のように寝坊はできないぞ。


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