アルカサバは、丘の西端を取り囲むように築かれた堅牢な要塞だ。アルハンブラの歴史は、このアルカサバの建造から始まっている。
レコンキスタ(国土回復運動)が勢いを増す中、1212年、北アフリカとアル・アンダルスを支配していたムワッヒド朝とキリスト教軍が激突。その結果は、ムワッヒド朝の大敗。この地におけるイスラムの支配権は完全に失われようとしていた。グラナダを首都とするナスル朝が奇跡的に成立したのは、その20年後のこと。そのナスル朝が、なにをおいてもアルカサバの建造に着手したのには、こうした危機的な時代背景があった。
そんな歴史的背景を考えてみれば、昨日、サンニコラス広場から望んだアルハンブラが、統一性にも優雅さにも欠けているように見えたのも、実は当然のことだった。レコンキスタ勢力の目に、夢の宮殿、地上天国のように映ったならば、アルハンブラはずっと早い時期に陥落していたに違いない。
アルハンブラに現在の形の宮殿が完成したのは、それから1世紀あまり後の14世紀末のこと。しかし、そのときすでに、ナスル朝の命運は風前のともしびだった。滅びに至るまでの悲しい物語は、ご存知の通り。
|
 |