右手に庭園を見ながら細い小道をしばらく歩き、サンタマリア教会を通り過ぎると、四角形の妙にごっつい建物とぶつかった。カルロス5世宮殿だ。カルロス5世といえば、かのハプスブルク家出の神聖ローマ皇帝カール5世のこと。そのカール5世の命によって建造されたルネサンス様式の建物だ。
昨日サンニコラス広場からアルハンブラを眺めたときに一番目立っていたのが、この威容だった。そのときは、あれがアルハンブラ宮殿の中心部か、などと勝手に想像を膨らませていたのだが、考えてみれば、ルネサンス様式のこの建物がイスラム王朝の宮殿であるはずもなかったのだ。
宮殿内に入ってみると、角張ったいかつい外見とはうらはらに、壮麗な円形の回廊が広がっていた。その均整美は見事だが、「なんでアルハンブラにこんなローマ風の建物があるの?」っていう違和感がどうしてもこみ上げてくる。これを建てるにあたって、それまでここにあったイスラムの建物が取り壊されたと聞くと、なおさらこの大仰さが鼻についてしまう。 |
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