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さらに通りを進むと、突き当たりを左に折れる。なおも数百メートル歩くと、海が見えてきた。目の前を延びる堤防の上に立った。海岸線には古くて趣のある家々が並び立ち、無骨なスカイラインを形作っている。

どこか見覚えのある光景だった。

しばらく記憶を探っているうちに思い出した。『ニューシネマ・パラダイス』の中で、パラダイス座が一度だけ野外上映を行うシーンがある。その上映会場となったのが、まさにこの防波堤だったのだ。入場料を惜しみ、雨の中、海に浮かべた船に乗って映画を観ている男たち。その背後には、さびれた家々が映し出されていた。いま目の前に存在する家並みが、まさしくそれだった。それに気づいたときには、うれしいというか、ほっとした気分になった。チェファルー駅がロケ地かどうかを確認できず、がっかりした気分を引きずっていたのだが、いま、ようやく「ここがロケ地だ」と明確に特定できたのだ。これで、チェファルーを訪れた目的はひとまず達成ということにしておこう。

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