チェファルーでは、ロケ地巡りのほかに、果たしたい目的がもうひとつあった。それは、あの断崖に登って、チェファルーの街並みを見渡すことだった。日本を発つ前、あの崖から撮ったと思われる写真を何枚か目にしたことがあった。荒々しい断崖、その麓でひしめき合う茶色い屋根。その向こうにどこまでも広がる青く透明な海。赤と青のコントラスト。その鮮烈で迫力に満ちた光景が脳裏に焼きついてしまい、それ以来、チェファルーに来たらここに登ってやると決めていたのだ。
海を離れると、再び街のなかへ。観光客で賑わう大聖堂の広場を通り過ぎた。運良く見つけた標識にしたがって、断崖絶壁へと続く細い坂道に入った。そのとたん、周囲が静まりかえった。ここは中世の面影を色濃く残す地区だった。猫がのんびり歩いてたりして、路地フェチとしてはたまらなく魅力的なところだ。しばらくうろつきたい衝動がこみあげてきたが、いまは目的を果たすのが第一。このまま先を急ぐことにした。 |
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ごちゃごちゃした路地裏空間を抜けると、断崖に突き当たった。もちろん、ここからロッククライミングを試みようというのではなく、絶壁に沿って設けられた階段を上るのだ。どこまでも続いているようにも見える。なんだかえらくつらそうだけど、ここまで来たら覚悟を決めるしかない。
息を切らし、何度も休みながら登り続け、ようやく崖の上に到達。眼下にはチェファルーの街並が。これを眺めたときには、登ってよかったと報われた気分になった。しかし、最終ゴールはここではない。この崖の上には、さらに岩山がそそり立っている。てっぺんには、なにやら城跡のような建物も見える。ここで満足したら男がすたる。あそこまで登ってこそ目的を果たしたことになるのだし、登った価値もあるのだ。相当疲れていたのだが、やけくそな気持ちも手伝って、はるか遠くに見える頂上を目指すことにした。 |
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