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岩山を下り、崖の下にたどり着くと、再び海まで歩き、砂浜に沿って続く道をしばらく散策した。
『ニューシネマ・パラダイス』の制作においては、海辺のシーンの多くがここチェファルーで撮影されたという。それらをいちいち探し出すことは、短い日帰り旅行ではとてもかなわないことだった。いまはただ、青い地中海と、少年トトの面影をかいま見ることができたことに満足して、帰路につくことにした。
5時を回ったころ、チェファルー駅に戻った。朝方の曇天がうそのように、いまは雲の姿が見えないほどに晴れあがっていた。夕日がオレンジ色の光をホームに投げかけている。まもなくやってきた列車に乗り込み、名残を惜しみつつ、一路パレルモへ。
ロケ地巡りは思うようにいかなかったけれど、それはそれ。またいつか、ここに戻ってくればいいだけのことだ。 数年後か、ひょっとしたら、それは数十年後になってしまうかもしれない。故郷を発ったトトがそうだったように。が、それもまたいい。
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