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さらに歩くと、広場に出た。シチリアでは広場らしい広場に出会ったことがなかったので、思わぬ広さに感動する。
その広場の正面に、ドゥオモがそびえている。バロック様式の堂々としたファザード。左右にはペテロとパウロの像。見上げると、その力強さに圧倒される。
このドゥオモの最大の特徴は、紀元前5世紀に建立されたアテナ神殿をそのまま教会として転用したという点にある。ファザードを見ただけではそのことには気づかないが、側面に回ってみると、神殿の円柱がそのまま壁の一部として使われていることがわかる。内部にも円柱がそのまま残っている。これは、かなり興味深い。
思えば、数日前訪ねたアグリジェントのコンコルディア神殿も、このドゥオモと同じように、のちに教会に転用されたからこそ、あのような勇姿をいまも保っているのだ。裏を返せば、そうでない裸のままの神殿は、度重なる戦争や大地震でほとんど破壊され、瓦礫の山と化してしまったことになる。そんな事実からも、シチリアの厳しい侵略と災害の歴史がうかがい知れるのである。
さらに本土側に歩くと、アポロン神殿。シチリアで最古のドーリス式神殿とされているが、往時の姿はほとんどとどめていない。ここも教会に転用されたのだけど、時代を下るにつれ、さらにモスクや兵舎としても使われたというから、そのぶん破損もひどくなったのだろう。
ギリシャ時代の遺跡を堪能するには、やはり本土側の考古学公園に行くしかなさそうだ。少し距離はあるが、散歩がてら徒歩で向かうことにした。だが、その前に腹ごしらえしなければ。 |
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