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宿に戻ってしばし休み、再び外出。ボリュームのあるランチを取ったので、夕食は軽めがいい。近くのピッツァリアでピザ1枚だけを食べると、夜の散歩としゃれこむ。


オレンジ色の街灯に彩られた夜のオルティージャは、期待以上にいい雰囲気だ。もっと寂れていると思っていただけに、これはうれしい誤算。やはりここに泊まることにしたのは正解だった。





シチリアと南イタリア地方は、かつてはマグナ・グレキア(大ギリシャ)と呼ばれていた。そのマグナ・グレキアの親玉的存在であり、最盛期にはアテネをもしのぐ繁栄ぶりを見せていたシラクーザも、イスラムの侵略などで、すっかり寂れ果ててしまう。オルティージャに活気が戻ってきたのも、それほど前のことではないという。

「それというのも、この立派な町も今はその光輝ある名前以外には何も残っていないということを知っているからである」
ゲーテ著、相良守峯訳
『イタリア紀行(中)』岩波文庫

アグリジェントの観光にたっぷり時間を費やしたゲーテも、シラクーザに対してはこのようなつれない評価を下している。結局、シラクーザに立ち寄ることなくシチリアを発ってしまうのである。

ぼく自身も、当初この町は訪問都市のリストに入っていなかった。ここを訪れるくらいだったら、アグリジェントに二泊して遺跡をじっくり見て回るか、アラブの雰囲気を色濃く残すというシャッカを訪れようと思っていた。けれども、あの美しい落日を眺め、この夜の町の雰囲気を味わったいま、ここを訪れてよかったと素直に思えた。セリヌンテ、アグリジェント、そしてここと、カルタゴの足跡を最後まで追えたことにも満足した。これで、ふんぎりがついた。

夜の散歩は、ドゥオモ広場で締めくくった。ほのかにライトアップされたドゥオモの聖人たちは、昼間の圧倒されるような姿とは打って変わり、やさしい表情を湛えていた。旅人を静かに迎え入れ、送り出してくれているようにも思えた。

 
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