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照り返しのきつい坂道を再び何分か歩き、小高い丘を一登りすると、ヘラ神殿に到着した。ここからの展望はひときわ見事だ。コンコルディア神殿と同じように、神殿の南側は切り立った崖になっていて、彼方には青い海が広がっている。
それにしても、セリヌンテといい、アグリジェントといい、どうして同時期にこれほど多くの神殿を築き上げたのだろうか。おそらくそれは、どちらもギリシャ植民都市であるという事実と無縁ではない。入植者の都市だからこそ、本国ギリシャに対する感情は複雑なものがあり、本国に負けるものかという気概も強かったに違いない。ちょうど、ドゥッガをはじめとする北アフリカのローマ植民都市が、本国ローマに対して恐れとともに同様の感情を抱いたように。大神殿群の建立こそが、本国に対する繁栄と威信の誇示だったのだろう。
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