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ヘラ神殿を後にして、道を戻る。コンコルディア神殿を通り過ぎ、なおもしばらく道を戻ったところに、ヘラクレス神殿があった。
8本の円柱が青空に向かって静かに延びていた。
だいぶ西に傾いた太陽が、円柱をオレンジ色に染める。
ある国を旅していて、ある光景と出会ったとき、「ここが旅のクライマックスなんだな」とわけもなく確信してしまうことがある。これを見たかったのだ。これさえ見れば、あとはもうどうなってもいい、と思わしめる光景との遭遇。
チュニジアでいえば、マハディアで見た青い海がそれだった。
そしてシチリアでは、この神殿からの眺めが、まさにそれにあたった。
この神殿の谷の劇的な光景が、最も強く脳裏に刻まれることになるだろう。
そんな確信が込みあげてきた。
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