|
市場をあとにし、路地を北に進む。何本もの路地が入り乱れているので、そのたびにどっちを進めばいいのか迷ってしまう。カンを頼りに適当に進んでいくと、ようやく大通りに出た。町を東西に貫くヴィットリオ・エマヌエーレ通りだろう。
対面には、大きな広場。その奥に、堂々とした建物が横たわっている。どうやらこれがカテドラーレらしい。司教座のある大聖堂で、通常、イタリアではドゥオモと呼ぶのだけれど、この町ではカテドラーレと呼ぶらしい。
もともとここには、ビザンチン時代の聖堂が存在した。それがイスラム王朝時代にモスクに転用され、さらにノルマン王朝時代に大聖堂に改築された。ビザンチン、イスラム、ノルマンなどの文明・文化を融合することで熟成を遂げたパレルモ。カテドラーレは、その歴史の複雑さを如実に物語っている。
見学していると、ポツリと雨が降ってくる。昼間から雨に降られるなんてついてない。この時期、シチリアは晴天続きだと思いこんでいたし、実際、トラーパニに上陸して以来ずっと日中は快晴が続いていたのだから、ショックが大きい。もしかしたら、パレルモを取り巻く地形が影響しているのかもかもしれない。パレルモは、その形状からコンカ・ドーロ(黄金の貝殻)と呼ばれている盆地に広がっている。海と山に挟まれているので、雨も降りやすいのではないか。いずれにせよ、曇っていると気分も乗らないし、カメラを持つ手も重くなる。今日だけの雨ならいいのだけど。
|