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カテドラーレをざっと見て回ると、今度はヴィットリオ・エマヌエーレ通りを東へ、つまり海に向かって進んだ。この通り、パレルモで最も由緒があるというのに、いや、それだからこそかもしれないが、歩道がきわめて狭く、デコボコしている。人とすれ違うときには車道にはみ出さざるを得ないので、後方から車が来ないか、絶えず気を配る必要がある。決してのほほんとは歩けず、街並みを楽しむ余裕がないのは残念だ。

そんな通りを数百メートル歩くと、クアットロカンティにたどり着いた。町を東西に貫くヴィットリオ・エマヌエーレ通りと、南北に貫くマクエダ通りが出会う四つ角だ。
町を概観するのは容易であるかわり、精通するのはなかなか困難である。容易だというのは、それは何マイルもつづいている一本の街路が、この町を下の門から上の門まで、海岸から山の方まで貫いており、またこの路がほぼ真ん中のあたりでまた他の一本の街路と交叉しているからだ

ゲーテ著、相良守峯訳
『イタリア紀行(中)』岩波文庫

ゲーテがこう記している、二本の街路が交叉するスポットがこのクアットロカンティだ。パレルモのへそに当たる部分であり、観光者にとってのランドマークでもある。見所としても面白い。まず形状がユニークだ。四つ角のそれぞれが切り落とされ、ちょうど八角形をなしている。空を見上げてみればよくわかる。切り落とされてできた各面はファザードになっていて、バロック様式の彫刻が施されている。十字路というより、劇場の舞台を眺めているような錯覚にとらわれる。

車の往来を眺めるのも楽しい。へそであるせいか、交通量も半端じゃない。とくに、バイクの姿が目につく。ホーチミン並みとまではいかないけれど、その数と騒音はかなりのもの。うるさいと言えばうるさいのだけど、その無秩序な喧噪はどこかアジア的でもあり、アラブ的でもあって、なんだかなつかしさを覚える。

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